別れたい女たち 〜恋は愚か愛は憎しみと紙一重〜

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杉田夕実が目の前の母親の首を締め上げたのは、一瞬のことだった。両手の親指を顎の下に食い込ませて喉を押しつぶすようにしていた。 「夕実!!」 父親は目の前の惨劇に声を荒げた。 杉田夕実には何も聞こえない。ただ、自分の手で、自分から何もかもを奪い続けて来た、母親を、母親の息の根を止めてやろうとしか、それしか頭にない。 「やめなさい!」 母親の顔が、赤黒い色に変化していく。父親はなんとか必死に夕実の腕を掴み、母親の首元から引き剥がそうとしている。 「あんたがバカだからでしょ!!!」 夕実は母親の首を締めたまま、父親を睨みつける。 「こんなクソ女にあんたが騙されたからでしょ!!」 夕実は、思い通りにならない子ども時代を過ごして来た。それもこれも原因は両親のせいだ。弟に奪われ続け、大学進学も諦めさせられそうになった。
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