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気がつけば3本目。起きている時間ずっとアルコールを口にしている。
「“大丈夫ですか?”なんて聞くのが失礼よ。…決まってるでしょ。」
酒を煽って煽って煽り続けている。自分の声量に気づけないほど、耳にこだましている心臓の音。
「大丈夫じゃないの。……大丈夫じゃないの!!!もう無理なのよ!!!!」
夕実が、座り込んで泣き叫んでいる声にそこら辺にいる犬が反応して高い声で吠え始める。
どうやら同じように犬が吠えているのだと勘違いしているらしい。
「なんで私はずっと不幸なのよ……。誰か幸せにしてよ……。」
飲み終わった缶を潰して手のひらを浅く切る。
滲んで出てきて真珠のように球になっていく赤黒い血液をじっと見る。
ーーーもっと深く切れば、きっと死ねる。死のう。死のう。死のう。………。
夕実は両手で缶を握り潰しては切り傷を作っていく。アルコールを煽りながら、同じことを繰り返している。
不思議と手は痛くないのだ。アルコールのせいで麻痺しているのだろうか。痛覚がないように感じる。キレてもかゆい程度だ。
夕実は、両手に切り傷を作りながら自分が切りつけた直哉の後ろ姿を思い出した。
「…直哉。」
夕実が比嘉結菜に体を支えられている間も、唐沢直哉は夕実を見ていなかった。
夕実は唐沢直哉はずっと、比嘉結菜のそばにいたのかと思考を巡らせる。
比嘉結菜に嘘をつかれ、唐沢直哉に裏切られ、アイツらはどれだけ自分をバカにすれば気が済むのかと唇を噛み締めた。
「私が、なんでこんな目に遭わなきゃいけないのよ。」
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