別れたい女たち 〜恋は愚か愛は憎しみと紙一重〜

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「澤木さ……澤ちゃん。三神さんからあなたは元警察官だと聞いています。小名浜署の生活安全課所属の野尻さんが友人だということも。」 “三神さん”は、俺の知り合いのドS探偵。 “野尻さん”は、警官時代の同僚で今は時々遊ぶ俺の友だち。 「ん?俺の話、関係なくない?」 「澤木さ……澤ちゃん。」 「無理すんなよ。」 岩屋弁護士が咳払いをする。 「澤木ちゃんは」 「ぶは。」 吹き出したのは俺じゃなくて、唐沢直哉だ。 思わず唐沢直哉の頭を引っ叩いた。 「直くんが笑うとこじゃないかんね?」 「すみません。」 岩屋弁護士がもう一度咳払いをした。 「澤ちゃん。もう少し法律を勉強してください。少し調べればわかることですが。」 岩屋弁護士が、パソコンの画面に手を添えた。ブレーン法律事務所のホームページだ。 「見てください。こちらに表記されているように。法律上、闇金からの借金は自己破産の申し立てはできないことになっています。」 ホームページには、“自己破産、ちょっと待った。借金には法律で定められた救済措置があります。” “※闇金からの借入に自己破産は通用しません” 「知りませんでしたか?澤木さ…澤ちゃん。」 …知らなかった。 「すいません、勉強不足です。もっと勉強します。ごめんね、直くん。」 俺は唐沢直哉に頭を下げた。 「まあ、澤ちゃんが直接裁判所に行かず弁護士を通して手続きをしようと考えてくれたので、唐沢さんの救済の余地ができました。 危機一髪でしたね。 自己破産すると、闇金から一生酷い取り立てに遭い続けることになりますから。」 「勉強になります。」 岩屋弁護士が、パソコンを自分に向けた。 「まず、唐沢さんが闇金に手を出した経緯は?」 「あ、……えっと。」 唐沢直哉が不安そうな顔を俺に向けてくる。
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