別れたい女たち 〜恋は愚か愛は憎しみと紙一重〜

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「あー、直くんは。違法賭博海外サイトにハマってしまい。…注ぎ込む金を、最初は街金から借りたんですが。」 「ええ。」 俺が経緯を話していくと岩屋弁護士は、パソコンでそれを打ち込んでいった。 「直くんは限度額を超え、さらに返せなくなり。……どうしたんだっけ?直くん。」 「……あの。」 「奥さんに…カッコ当時は彼女カッコ閉じに黙って、浮気相手の?」 「………言わなきゃ駄目ですか?」 「当たり前だろ。直くんを騙した相手でしょ。」 俺が目を合わせれば 「……騙し……。」 呼吸を浅くする唐沢直哉を岩屋弁護士は眉を八の字にして見つめた。 唐沢直哉は浮気相手を本気で好きになり、あげく騙されていたなんて思いたくもないのだろう。 「澤木さ…澤ちゃん。唐沢さ……直くんが、きちんと話せるようにしてあげましょう。」 岩屋弁護士が、唐沢直哉を怖がらせないようにしている。 「唐沢さ…直くん。ゆっくりで構いません。教えてください。」 「……。」 比嘉結菜の名前を口にしたくないのか、唐沢直哉は何度か口を開けるものの言葉を発さない。 「では、話題を変えましょう。」 「え。」 「唐さ……直くんが、街金から借り入れたのはいくらですか?」 唐沢直哉が俺に不安そうに目を合わせてきた。 「言いなよ。いくら借りたの?」 「…さ、3件で…126万…円です。」 「やってんなー。」 「5万とか8万とか…少しずつ…借りて、気がついたら、そんな感じで。」 「クズだな。」 借金をしたことのない俺は、借金をする人間の心情には寄り添うことができない。
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