別れたい女たち 〜恋は愚か愛は憎しみと紙一重〜

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「返せる当てがなく、放置してたら裁判所から督促状が来て…。そんなの身内にも会社にもバレたくないし。」 「慌てて融資先を探した……ということでしょうか。」 「………はい。」 “はい”? ちょっと待て。“はい”じゃないだろ。 「その時点で弁護士に相談してくれていたら救済措置もあったんですがね……。まあ、過ぎてしまったことに何を言っても仕方がありません。」 「岩ちゃん、直くんは嘘ついてるから気をつけて。」 「え?」 唐沢直哉の顔を覗くと目を泳がせた。 「浮気相手に紹介されたんだろ?アンゼンローン。」 「……。」 「浮気相手に口車に乗せられて、闇金に嵌められたんだろ?浮気相手の名前は?」 唐沢直哉が膝の上で拳を震わせている。 「ゆいちゃんは、俺を嵌めたんじゃないです。 助けてくれたんです……。街金に借金返せないとほんとヤバかったから……。」 「ゆいちゃんに言われて借りたアンゼンローンからの借金。返済のために違法薬物の運び屋になりかけただろ? 俺が声かけなかったら、偽装パスポートでフィリピンに行ってたんだぞ?その方が良かったか?」 唐沢直哉は瞳を潤ませ口を引き結んでいる。 「直くん、しっかりしろよ。」 肩に手を置いて揺さぶった。唐沢直哉の目から涙がボロボロ溢れる。 おいおい、泣くとこじゃないだろ。 「ゆいちゃんは、夕実に復讐するために俺を介しただけで。俺は、ゆいちゃんに騙されてなんかない。」 「おいおい。」 恋は恐ろしい。比嘉結菜に騙されてないと思ってんのが怖い。 「では、騙されていないとして。」 岩屋弁護士は俺と唐沢直哉の会話を割くように少しだけ声を張った。
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