別れたい女たち 〜恋は愚か愛は憎しみと紙一重〜

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「良かったです。1円でも返済していたらどつぼにハマるところでした。これからも、1円でも返してはいけません。 取り立てに耐えられず1円でも支払えば元金以外に支払わなくても良い不当な利子を払い続けることになってしまいます。」 岩屋弁護士の発言に唐沢直哉が、はっとして顔を上げた。 「……やっぱり、ゆいちゃんは俺のこと嵌めてません。」 「は?」 「言ってたんです。借りても、返す必要ないって。」 バカヤロウ。それは杉田夕実から財産を奪い取るためだろ。お前はカモにされただけなんだよ。 「闇金に手を出したその恐ろしさは厳しい取り立てにあります。 事実、唐沢さ…直くんは違法薬物の運び屋にされかけたんですよね? 取り立ては本人の周囲の方…配偶者やその親にまで及びます。 自宅へ押しかけたり、嫌がらせの張り紙を貼ったり、時には暴力に訴えたり……。」 そもそも、比嘉結菜が唐沢直哉のギャンブル狂を利用してアンゼンローンに借金をさせたのは杉田夕実への復讐のため。 「唐沢さ…直くん。あなたは澤木さんに匿われて失踪している状態になっています。 あなたの代わりに身近な誰かが被害者になっている可能性が考えられますね。」 しかし、杉田夕実だ。のらりくらり交わしているのだろう。めんどくさいから、あまり近寄りたくないしわざわざ調べたくもない。 「澤木さ…澤ちゃん。」 「え。」 「配偶者の方の自宅くらい見に行ってみてはどうでしょうか。」 「ええー。」 「場合によっては、刑事事件に発展している可能性もあります。見過ごすんですか?元警察官ですよね?」 岩屋弁護士が俺の正義感を利用しようとしている。正義感を搾取されそうだ。 唐沢直哉も俺を見つめている。いや見んなし。 「被害が及ぶ前に一刻も早く、唐沢さ…直くんの戸籍から配偶者の方の戸籍を抜くことをおすすめします。連帯保証人でない限り全くの赤の他人には、借金の返済を求めることはできませんから。」
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