別れたい女たち 〜恋は愚か愛は憎しみと紙一重〜

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岩屋弁護士をチラ見すると、何かをじっと考えているようだった。 「唐沢さ…直くんは、とってもいいカモだと私は思います。 ギャンブル狂であり、金と女にだらしないところもありながら、素直で優しい性格の持ち主。 とても騙しやすく操りやすいあなたを嵌めるのは容易いことでしょう。」 俺も唐沢直哉も岩屋弁護士がはっきり言うのを黙って聞いていた。 「恋は利用されます。愛は裏切られます。恋や愛は搾取されやすいものです。 自分ばかりが舞い上がっていないか今一度、よく考えるべきです。真実の愛と呼べるものは無いとは言いませんが、現実ほんのひと握りです。 唐沢さ…直くんは見極める力を身につけるべきです。配偶者の方にさえ、都合よく扱われていた可能性もありますし。 …あるいは、結婚さえも第三者に利用されていた…と私は推測しますが。」 図星でぐうの根も出ない状態の唐沢直哉。 岩屋弁護士は、唐沢直哉の動かない方の手を両手で握りしめた。 「直くん。努めてください。私や澤ちゃんは、あくまでも直くんの後ろ盾にすぎません。あなたに強い気持ちを持っていただかないとこの案件は解決しません。」 岩屋弁護士の顔つきは優しいが、瞳が訴えてくるものに直哉は目を見開いた。 「……はい。」 「アンゼンローンさんの件に関し、裁判を起こすには至らない案件となるように努めたいと思います。 まずは、配偶者の方に離婚を快諾してもらう。浮気相手の方とのお話はその次で結構です。」
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