別れたい女たち 〜恋は愚か愛は憎しみと紙一重〜

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杉田夕実の異変に気付くには時間がかからなかった。 唐沢直哉と共に市役所から離婚届を受け取り杉田夕実の自宅を訪れたが、インターフォンに応答がない。 平日、午前10時。働いている人なら会社にいる時間だが、杉田夕実は騒ぎを起こして以来会社には行っていないことはわかっている。 「どこか出掛けてるのかな。直くん連絡してみる?俺のスマホに連絡先入ってるよ。」 「え、澤木さん喋ってくださいよ。」 「はー?」 渋々、杉田夕実に電話をかけてみる。呼び出しはなり続けるが応答がない。 「……出ない。寝てんのかな。」 唐沢直哉が、ポストを探っている。 「鍵?」 「はい。ありました。」 鍵穴に鍵を押し込もうとするから、その手を止めた。 「直くん。大胆すぎる。」 「え。」 「もし、中に乃村常務とかがいたら…とか考えないのかな?」 周辺に乃村の車があるわけではないし、その心配はいらないのだが。 「いても別に。」 おいおい。 「もし、………致してたら?」 「…別に。知りませんよ。」 マジかよ。なかなかバグってんな。 「いやいや、気まずいだろ。」 「澤木さんて。」 「なんだよ。」 「意外と気にするんですね。浮気調査で稼いでるくせに。」 なんだその言い方?お前のためにこんなとこにまでついてきた俺に向かって、なんだその態度は? ブチ切れそうになるが、必至に耐える。 唐沢直哉が玄関を開け、息を呑んだ。
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