別れたい女たち 〜恋は愚か愛は憎しみと紙一重〜

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「散らかってるー。どうなってんの君の奥さん。」 家の中はゴミ屋敷になっていた。殆どがアルコールの空き缶。脱ぎ捨てられた衣服も散在している。 「やめてください、それ。」 床を見れば寝室まで赤黒いシミが続いているし、辿っていけば不規則に並んで玄関に繋がっている。 唐沢直哉が不審な表情をしながら寝室の扉を開けた。 「……え。」 マットレスには血が染み付いていた。白い塊が床に落ちている。触るのは気持ち悪いらしく、唐沢直哉は視線だけそれに向けている。 「たぶん、歯だよ。」 「え。」 「杉田夕実が誰かに殴られたか蹴られたか…杉田夕実が誰かを殴ったか蹴ったか……。」 「まさか。ゆいちゃんをここに呼んでひどい暴力を振るったんじゃ……。」 唐沢直哉は、青ざめた顔で血の染みついたマットレスを見つめた。 「こんな時でも比嘉結菜の方が心配?少しだけ、杉田夕実が可哀想になってくるねー。 まあ憶測だけど、比嘉結菜はここには来てないと思うよ。」
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