この思いを貴方に届けたい

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               《1》 貴方と別れる四ヶ月前。癌を患っている私は余命一年もないと宣告された。癌でいつ死んでもおかしくない私は病室で貴方と出会った。看護師の南さんは同じ病室に一人の入院者が来るって言っていた。 一体どんな人が来るんだろうと楽しみにしていた。仲良くなれたら一人じゃなくなるかもしれない。そんなことを考えていた。 貴方の名前は佐藤 陸。同じ高校一年生だって病室に貴方が来た時言ってたね。 貴方は私と正反対の姿をしていた。異性であることはもちろん。髪は白くて顔立ちも良くて。一番は思ったことを全力で言おうとするところかもしれない。 癌で余命一年もないって言ったとき。陸、貴方が私に聞いてきたこと覚えてる? 『なんでそんなに笑顔でいられるの?』 そうだね、死ぬのが怖くないの?って感じだったよね。あの時私は嘘をついたの。 『だって、悲しんだって運命は変わらないでしょ?悲しんで暗い毎日を送るより笑顔で毎日を過ごしたほうが未練がないじゃん』 本当は、こんなこと思ってもいなかった。貴方の質問に対して私は正直に答えられなかった。 本当の理由は、『怖かったから』。自分の口で悲惨な現実を口にして真に受けるのが怖かったから。でも陸、貴方は私の恐怖を消し飛ばしてくれた。素直で面白くて、優しくて、誠実で。貴方のそんなところに恋をした。 「陸、あとどのくらい生きれるかわからないけど。終わりが来るまで仲良くしてくれる?」 「うん、仲良くするけど。そんな悲しい言葉言わないで」 「悲しい言葉か、ごめんね」 微笑んで謝る。でも陸は何も言わない。ひたすら私の目をまっすぐに見つめてくるだけ。ねえ、陸。なんで貴方はそんなに綺麗な目で見てくるの。惹かれるじゃん。 いや、もう惹かれていってるんだ。 『俺は空と本が好きかな』 それを聞いて私は陸を絵として残したいと思った。本を読んでいる陸を綺麗な空と一緒に絵にしたら世界で一番美しいものになると思った。 陸、私は貴方と出会ってこれからが変わるかもしれない。 これからもよろしくね。
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