51人が本棚に入れています
本棚に追加
私の覚えている高校生の亜里君が少しだけ黒く塗りつぶされるのを感じる。
高校生の亜里君は、どこかシャイな人で……。
178センチと高身長でスッキリとした塩顔が特徴だ。
そんな目立つルックスとは違い。
女子に話しかけられると少しだけハニかんで笑うような人で、会話もうまくなかった。
女子生徒達は、そんな亜里君と話しては離れ、話しては離れを繰り返していた。
そして、最後まで図々しく亜里君に声を掛け続けていたのが私だ。
気づけば亜里君から、私に声をかけてくれるようになった。
今みたいに名前で呼ぶわけじゃない。
「ねぇーー、ねぇーー」と近づいてきて話すだけ。
いつか名前を呼ばれたい。
いつか亜里君の隣に彼女として並びたい。
高校生の私は、幾度となくそんな夢を見ていた。
亜里君に告白して振られる度に、何故か距離はどんどん近くなって。
不思議なぐらい、もうすぐ付き合えるって信じられた。
波野山がなかったら。
あの出来事の後、亜里君と私の距離は少しだけ遠くなった。
私から亜里君を意識的に避けたのもあったのかも知れない。
連絡先を知らない私達が、物理的に距離が離れれば終わるのは当然の事だった。
「るーーかちゃん」
「あっ、ごめんなさい」
「聞いてた?今の話」
「あっ、うん。聞いてる」
誰でもよかったなら、私でもよかったんじゃないの?
高校生の亜里君がしたわけじゃないのに、一瞬こう思ってしまった。
私が好きだった亜里君は、こんないい加減な人じゃないのに……。
いや、でも。
人は変わらないっていうから、だとしたら初めからこんな人だったの?
最初のコメントを投稿しよう!