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叩きつけられた離婚
「あのね、亜里。私達、夫婦なんだよ!!わかってる!!」
せっかくの休みだと言うのに、俺は瑠美のキーキーと叫ぶ声に起こされる。
「わかってるよ。昨日は、飲みすぎて。あれ、空海は?」
「そんな話じゃないの。空海は、私の母が見てるわ」
「どうして?」
「私達は、話をしなくちゃならないからでしょ!」
ベッドの上に寝ている俺に瑠美が叩きつけてきたのは、離婚届だ。
今年に入ってから、ヒステリックに瑠美が離婚、離婚と騒ぎ立てるのは、俺のスマホを見たせいだった。
「あのさ、だから、彼女とは何もないんだよ」
「何もない人の事をいちいち検索するの?亜里は、知らなかったのよね。検索履歴を削除しなきゃいけないって」
「別にやましい事はないし。彼女と会った事も一度もないんだって」
「じゃあ、何で検索したのよ」
「それは……ちょっと気になったから」
「ちょっとって何?亜里って私の事、本当に好きだった?付き合う前に高校生の時の忘れられない恋があるんだってみんなに話してたじゃない。それって、この女の事よね?」
飲みすぎた頭に瑠美のキーキー声が響いて死にそうだ。
反論したいけど、合ってる部分もあって反論出来ない。
それに、頭が痛いせいで思考がうまく回らない。
そのせいで、瑠美はさらに苛立った。
「やっぱり、そうなのね!亜里がずっと思ってるのは、この女なんだ!最低よ!亜里は、最低」
「離婚しようか」
割れそうな頭で考え付いた言葉がこれだったなんて笑える。
だけど、瑠美の言う通りで。
俺は、彼女をずっと忘れられなかった。
「わかったわ!でも、一つだけ条件がある」
「条件って何?」
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