叩きつけられた離婚

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離婚届を渡してきたのは、そっちじゃないか!!と言いたくなった言葉を飲み込んで「わかった」と頷いた。 瑠美は、離婚届を持って立ち上がると「向こうでサインして」と俺に話す。 ベッドから、ノソノソ降りた俺はリビングに向かう。 ボサボサ頭を撫でながら、あくびを繰り返して歩いた。 「ここにサインして」 「わかった」 瑠美に渡されたボールペンでサインをする。 出された判子を離婚届につくと、瑠美は判子を乾かす為に、離婚届をズラした。 「養育費は、ちゃんともらうから」 「わかってる」 「月10万。それは、譲らないから」 「わかってる」 28歳の俺にとって、月10万は正直キツイけど……。 まだ、3歳になったばかりの空海を抱えて瑠美がフルタイムで働くのは大変なのはわかる。 幸い給料のいい会社に働いたお陰で、手取り25万はあるのだから贅沢しなければ暮らしていけるから大丈夫だ。 少しだけ回るようになった頭で、そう考えた。 「それで、さっきの事だけど」 茶封筒に離婚届を入れながら瑠美は俺を見つめる。 もう終わったと思っていた話しは、まだ終わってなかったようだった。 「さっきって検索履歴の話?」 「そう。私と別れたら、彼女に会いに行くつもり?」 「まさか、そんな事はしないよ」 「そう。じゃあ、やっぱり忘れられない人って彼女なんだね」 俺が否定した事で、彼女が忘れられない人間だと言う事がバレてしまった。 「ごめん。でも、名字がうろ覚えで。見つける事は困難だったから……。だから」 「だから、安心してとでもいいたいの?」 「いや、そんな事は言ってないよ」 「まあ。亜里と私はもう他人になるからどうでもいいわ。だけど、空海にとっては亜里はたった一人の父親なの」 「わかってる」 「じゃあ、会いに来てあげてね。一年に一回!沖縄に……」 「沖縄って、そんな何のゆかりもない所に引っ越してどうするんだよ」 「何のゆかりもないから引っ越すのよ」 「どういう事だよ」 瑠美は、俺を睨み付けて立ち上がる。 「離婚の事、お母さんにも相談したら、恥ずかしいって言われたのよ。だから、ここにはいられないの」 「だからって沖縄何か行ってどうするんだよ」 バンッ! 瑠美が机の上に置いたのは、住み込みのリゾートバイト募集と書かれている求人誌だった。 「空海と生きて行くためよ」 求人には、【シングルマザー歓迎】、【託児所完備】の文字が並んでいる。 一生懸命、瑠美なりに考えたのがよくわかった。 「遠いから会いに来るのは年に一回で許してあげる」 瑠美の目に涙が浮かんでいるのを見て、俺はまた人を傷つけたんだと理解した。 俺のくすぶっている思いのせいで、また人を……。
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