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『もう、のろけ?』
「だから、違うって」
『でも、子供が全てじゃないよ。だって、私は子供出来たけど離婚したからね』
「ありがとう、千夏」
原沢千夏は、中学からの親友だ。
修作が仕事に行ってから、50分後に必ず千夏から電話がかかってくる。
最近、免許をとったばかりの千夏は、運転中に私と話すと落ち着くらしい。
『でもさーー。私達もアラフォーでしょ。そろそろ、瑠花も働くか最後のチャンスで治療するか決めた方がいいんじゃない』
「だよね。でも、私も修作も治療するほど子供望んでないんだよね」
『瑠花は、お母さんと折り合い悪かったもんね。それに、お父さんから殴られてたからでしょ?自分も手を出したらって』
「そうなの。現に、同級生で虐待受けてた篠村さん逮捕されてたでしょ?先週ニュースに名前出てびっくりした」
『見た見た。息子と娘を殺害したってね。しつけだと思ってたって話してたよね。怖いなら産まなくていいんじゃないかなーー。あっ、じゃあ仕事だから頑張ってくるね』
「うん。気をつけて、行ってきてね」
『じゃあ、また帰りにかけるからね』
「はーーい」
毎朝、千夏と話す事は私も嬉しい。
子供がいても、千夏はわかってくれる。
それだけで、一人で抱えなくてすむ。
それでも、やっぱり時々は孤独に支配される事がある。
昼になると千夏からかかってくるから、それまでに洗濯や掃除などを終わらせておく。
「はぁーー、疲れた」
やる事は同じなのに、アラフォーにもなるとあちこちが痛くてしんどさが増す。
こんなんで、子供とか考えられる?
無理。
絶対、無理。
でも、修作との間に子供は欲しい。
でも、体が辛い。
そんな言い訳しちゃってたら、無理かな。
ソファーに寝転がって、スマホを見ているうちに眠ってしまった。
ブー
ブー
「もしもし」
『もしもし、瑠花。今日さ、かなり大変だったんだよ。すっごい失敗しちゃってね』
「大丈夫?」
『落ち込んでたけど、瑠花と話してると元気でた』
「よかった」
『瑠花……色々あるだろうけど。いつでも、相談してね。私でよかったら、いつでも聞くから』
「ありがとう。千夏には、いつも救われてる」
『いいの、いいの。それで、今日もbarに行くの?』
「うん。一杯だけだけどね。」
『ストレス発散になってるならいいんじゃない。別に浮気してるわけじゃないんだから』
「そうだよね。少しぐらいいいよね」
『いいよ、いいよ。一杯ぐらい大丈夫だって』
「ありがとう、千夏」
千夏の言葉に勇気をもらえる。
そのお陰で、私は明日も修作と笑える。
『今日も行くの?bar』
「うん。週に三回は行きたいと思っちゃってるんだよね」
『いいんじゃない。土、日は修作さんが家にいるわけだからね。平日しか無理なわけだから、いいんじゃない』
「ありがとう、千夏」
『あっ、でも、今度連れて行ってよ。冬斗、お母さんに預けるから』
「うん。今度、一緒に行こう」
『じゃあ、ついたから切るね。明日も、よろしく』
「うん。明日も、楽しみにしてる」
千夏と電話を切って、ぼんやりと家の中を見つめる。
幸せ、すごく幸せ。
だけど、一部分かけてる。
そのかけを埋めるために、夜な夜な私は飲みに行ってる。
そんな事、修作が知ったらどう思うんだろう。
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