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それでも悪態を吐きたくなるくらい歩きにくかった。
こんな場所を往くのは、狩人や、薬草採りか、あるいは近隣をパトロールしている王都直属の騎馬兵隊か、雇われの魔物狩りくらいのものだろう。
錬金術師という線もあるかもしれない。
しかし、目指している森は、比較的魔物が多い場所でもある。
少なくとも、生粋の魔術師が一人で往くようなところではない。
軍部志望ならまだしも、魔術師というのは、基本的に魔物や獣と戦うには向いていないからだ。
そんな目指す森の近くに来ると、微かに周囲に雷属性の現象核が散っているのが解る。
雷の現象核が地表近くにあることは稀なので、何者かが、魔術、あるいは魔法を使った証だろう。
私は森の中に入り、さらに奥に進む。
すると、夜のコントラストに目立つ、眩い輝きが視界に入ってくる。
そして濃くなる雷の現象核。
それと、僅かに漂う金属性。
声が聞こえてくる。
咆哮のような、叫びのような。
私は茂みをかき分け、音と光の方へ進む。
すると見えた。
3メートルはあろうかという、大きなシルエット。
その背中が。
「これは……魔銀製の魔導機兵!?」
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