シエナと魔法槍術指南

8/36
前へ
/36ページ
次へ
「――特訓よ、ただの」  特訓? 「今度、シエナは学園の兵科で、白兵戦闘の実力査定があるんです」  なるほど、学園の生徒なのか。  しかも純粋な術師の普通科ではなく、この娘たちは魔法兵科を専攻している生徒だったらしい。  つまり、将来軍人や傭兵になることを目指している術師なわけだ。 「それで、魔法戦技(マギア)を使っていたのですか」  マギアとは魔力子(マギトロン)武芸(アーツ)をくっつけた造語だ。  他には魔奥義、剣の場合には魔法剣などともいう。   「まぁね……。でもさすがに、こっちの授業は出来ないんじゃない?」  こっち、とは、兵科のことでしょうか?  確かに、私の格好は二股の魔術帽子に、ケープ付きのローブ、ブラウス等、全身黒で統一され、古典的な魔術師スタイル。  見た目だけなら、接近戦などできないモヤシにしか見えないかもしれない。  それに技術的にも、真っ向勝負というのはいささか面倒ですし、私自身、術のほうがどちらかと言えば専門ではありますが。  仮にも私は、かつて、魔物を殺すのを仕事にしていましたからね。  ――多少の白兵戦の心得はありますよ。  仮にも学生に負けるようでは、逆に沽券にかかわるというもの。  その挑発、受けて立ちます。 「――試してみますか?」  私は紡ぐ――! 「(つち)に煌めき、締結(ていけつ)(みず)を暴く――集え、(うつつ)(まぼろし)示現(じげん)の刃――『金剛大剣(ツヴァイハンダー)神器(オリハルコン)』」    私は、『大剣』を作り出し。  そして思い付きを、大剣の先端ごと突きつける 「私と勝負してみませんか。――もしも私が白兵戦で勝てたなら……雇っていただけます? 兵科の特別授業が御所望なのでしょう?」 「ふん! ――どうみても生粋の術師(もやし)が! 言うじゃない!? ……なめないでよ!」  ハルバードを構える金色狐娘(シエナ)に、不敵に返そう。 「それはこっちのセリフです。……あと、雇ってくれるんですか?」 「……じゃあ、私たち二人、倒せたらですね。シエナ一人じゃとても授業料を払えないでしょうから」  さらに銀色狐娘(スールア)の声と共に。  ゴーレムは左右両方の拳を、ガツンと打ち鳴らす。  まるで自身を鼓舞するかのようなそのパフォーマンス。  ハルバードに雷の魔力を纏わせるシエナと合わせ。    獣人二人は、既に臨戦態勢だ。  二人同時に、ですか――。 「良いでしょう。――商談成立ですね」  いざ、就活のために! 望むところです!
/36ページ

最初のコメントを投稿しよう!

9人が本棚に入れています
本棚に追加