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「――特訓よ、ただの」
特訓?
「今度、シエナは学園の兵科で、白兵戦闘の実力査定があるんです」
なるほど、学園の生徒なのか。
しかも純粋な術師の普通科ではなく、この娘たちは魔法兵科を専攻している生徒だったらしい。
つまり、将来軍人や傭兵になることを目指している術師なわけだ。
「それで、魔法戦技を使っていたのですか」
マギアとは魔力子+武芸をくっつけた造語だ。
他には魔奥義、剣の場合には魔法剣などともいう。
「まぁね……。でもさすがに、こっちの授業は出来ないんじゃない?」
こっち、とは、兵科のことでしょうか?
確かに、私の格好は二股の魔術帽子に、ケープ付きのローブ、ブラウス等、全身黒で統一され、古典的な魔術師スタイル。
見た目だけなら、接近戦などできないモヤシにしか見えないかもしれない。
それに技術的にも、真っ向勝負というのはいささか面倒ですし、私自身、術のほうがどちらかと言えば専門ではありますが。
仮にも私は、かつて、魔物を殺すのを仕事にしていましたからね。
――多少の白兵戦の心得はありますよ。
仮にも学生に負けるようでは、逆に沽券にかかわるというもの。
その挑発、受けて立ちます。
「――試してみますか?」
私は紡ぐ――!
「土に煌めき、締結、水を暴く――集え、現、幻、示現の刃――『金剛大剣・神器』」
私は、『大剣』を作り出し。
そして思い付きを、大剣の先端ごと突きつける
「私と勝負してみませんか。――もしも私が白兵戦で勝てたなら……雇っていただけます? 兵科の特別授業が御所望なのでしょう?」
「ふん! ――どうみても生粋の術師が! 言うじゃない!? ……なめないでよ!」
ハルバードを構える金色狐娘に、不敵に返そう。
「それはこっちのセリフです。……あと、雇ってくれるんですか?」
「……じゃあ、私たち二人、倒せたらですね。シエナ一人じゃとても授業料を払えないでしょうから」
さらに銀色狐娘の声と共に。
ゴーレムは左右両方の拳を、ガツンと打ち鳴らす。
まるで自身を鼓舞するかのようなそのパフォーマンス。
ハルバードに雷の魔力を纏わせるシエナと合わせ。
獣人二人は、既に臨戦態勢だ。
二人同時に、ですか――。
「良いでしょう。――商談成立ですね」
いざ、就活のために! 望むところです!
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