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私は前足に傷を負った野良猫です
誰かが或る人物に嫌がらせする為に
全く関係の無い私に こんな酷い事をしたのです
そして その或る人物はというと
私を発見すると警察を呼びました
私を保護してもらう為ではなく
嫌がらせをした人物が
今度は自分に危害を加えるのではないかと
自分の身に危険を感じて
自分を守ってもらう為に
パトロールの強化だけを警察に頼むと
その人物は逃げるように去ってゆきました
警察がその後私をどうするのか
訊く事もせずに
幸か不幸か
警察は私を『動物指導センター』という所に送る事も無く
「怪我をしてたらどのみち死ぬだろう」と
放置して去りました
「たかが猫なんかの事で呼び出されて面倒くせー」と
ボヤき乍ら
「公園で死んでりゃ死体の処理は役所がやるだろう」と
「センターに連絡したら其処の人間が来る迄待たなきゃならないし」
「引き渡したという書類を作らなきゃならない」
「そんな面倒な仕事、猫なんかの為にやってられるか」
そう口々に文句を言い乍ら
でも 警察のその”怠慢”のお陰で
私は殺処分だけは辛うじて免れました
けれど 今私は誰もいない真っ暗な公園に一人きりです
どんなに足が痛いと鳴いても
助けてくれる人はいません
それどころか
怪我をして弱っているのを天敵に悟られたら
カラスや大きな蛇にでも見つかったら
他の肉食動物でも現れたら
私は格好の”獲物”です
だから私は歩かなければなりません
折れた足を引き摺ってでも
誰の目にもつかないような場所迄
避難しなければなりません
けれど傷付いた足は上手く動かず
なかなか前に進む事が出来ません
<足が痛い>
何故私が
こんな目に遭わなければならなかったのでしょうか?
何故誰も
私を助けてくれないのでしょうか?
<それは私が>
<飼い主を持たない野良だから>
<傷付けられても>
<犯人を捜してと言ってくれる”家族”もいないから>
<人間と違って傷害事件にもならずに>
<慰謝料を取られる心配も無い野良猫だから>
でも変ですね
人間の社会では
確か『動物愛護法』という法律がある筈です
それは飼い猫だけではなく
私のような野良猫や
自然界の生き物にも適用されるのではないのですか?
矢で射抜かれた鴨はニュースにまでなっていたのに
私は何故
こうして捨て置かれているのでしょう?
<足が痛い>
<少し動く度に鋭い痛みが私を襲ってくる>
私が歩けるのは あと僅か
もう限界に近付いています
そして完全に身を隠せるような場所も
近くには見当たりません
最初に発見されたのとは別の場所で
私は今度は
死体となって発見されるでしょう
そして私は処分されるのです
ただのゴミとして
さしずめ 『厄介な生ゴミ』
或いは
『可燃ゴミ』として
(2024年7月14日作の詩)
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