きっかけ

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「今日、来ていいの!?」  下校前に永遠たちが走ってきたかと思ったら、そうやって目を輝かせていて頷く。 「あ、でも、職員会議もあるから三時過ぎじゃないと無理かも」 「っしゃぁぁぁっ!!」  こんな永遠を見たのは初めてだ。  そもそも永遠からこんな風に話し掛けてきたのも初めてだった。 「とにかく今は下校!他の学年ももう出てるから……急ぐぞ!」  教室から出して児童たちの下駄箱まで来ると、そこで竜也先生も児童たちを外に出している。 「じゃ!また後でなーっ!」  わざわざ振り返って手を振る永遠が小学生らしくて少しかわいらしい。 「皆木たち、ご機嫌で走って行きましたね?」 「えぇ。前に言っていた夢中になれるもの……そうなるといいな、と思いまして」  竜也先生が下駄箱の上から靴を出しているのを見ながら僕も置いてあるのを出して隣に並んだ。 「と言いますと?」  トントンと靴を履きながら見られて、僕も竜也先生を見上げる。 「あのまま止めても、勝手にやって怪我するのは目に見えてるじゃないですか?」 「まぁ、そうですね」  僕も靴を履くと、二人で外に出た。 「しかも、永遠たちがやっているのはバク転ではなくバク宙なんで大怪我しかねません」  僕が夏の暑い日差しに目を細めて帽子を深くかぶると、少し考えて竜也先生はコクリと頷く。 「……確かに」  ちょっと思いついたことを相談すると、竜也先生は下校後学年で話すのを提案してくれた。
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