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僕の頭を優しく撫でる手が心地よくて、ずっとそのままで居て欲しいと思う。
だが、そうも言っていられない現実。
「起きた?」
仕方なく目を開けると、ハルが顔を覗き込んできて頷く。
「“Good”……先生」
穏やかなコマンドをくれてからハルが声を掛けると先生はイスから立ち上がった。
「お疲れ!」
ハルにカラーを外されると、一気に現実に戻された気がして寂しくなる。
このギャップがキツい。
でも、いつまでもダメージを受けてはいられない。
「うん、顔色もいいし脈拍も落ち着いているね」
先生に確認されて頷くと、ハルは僕の頭をまたゆっくり撫でてくれた。
このプレイ後の甘い空気が好きだ。
プレイ中はあんなに意地悪なのに終わると優しくていっぱい甘やかしてくれるハル。
たくさん笑って見える八重歯が少し幼くも感じてかわいいと思う。
「どっか痛かったり、辛くはないか?」
聞かれて頷くと、ハルはそっと抱き締めてくれた。
「……よく頑張ったな」
優しい……でも、ちょっと切ない響きもある気がする。
腕の中でハルを見上げると、ハルはまたにこっと笑って僕の額にキスをしてくれた。
それだけでさっき感じた少しの違和感は忘れてしまう。
「本当に大丈夫?帰れる?」
顔を覗き込まれてゆっくり頷いた。
このクリニックで誰よりも激しいプレイをするが、誰よりもアフターケアが甘くて心地よいハル。
ハルのパートナーは幸せだろう、と思いつつ、僕とはただのセラピストの関係が苦しく思った。
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