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羨ましい
何とか迎えた夏休み。
しかし、仕事がなくなるわけではなく、僕は出張で電車に乗っていた。
出張は嫌いだ。
息苦しいスーツ、窓に映る違和感満載の僕。
「……ハァ……」
ドアに手を付いてため息を零すと、肩を叩かれて慌てて振り返った。
「あ、びっくりさせた?ごめんな」
そこに居たのは同期の周防くんで、同い年でもあるのに僕とは違う長身で男らしい身体つきも、ビシッと着こなしたスーツも、生き生きした表情も……同じSubでもあるのに僕とは全然違って羨ましくて仕方ない。
「何?元気ない?」
聞かれて笑うが誤魔化しきれない気がする。
「昨日クリニックに行ってきたから多少マシなんだけどねぇ……」
ドアに凭れ掛かりながら周防くんを見上げると周防くんは「そっか」と軽く頷いた。
お互いSubとして、去年周防くんにパートナーができる前から色々なことをぶっちゃけてきた僕ら。
「いいね、周防くんは……」
「そう?」
ずっと抑制剤だけでセラピストにも頼らず頑なにプレイをしてこなかった周防くんの相談にも乗っていたから、お互いの性事情も僕たちは知っている。
「めちゃくちゃ顔色いいし、幸せオーラ全開」
「……それ……しょっちゅう言われんだけどさ……」
真っ赤な顔をして照れる周防くんがかわいらしい。
「それだけ幸せってことでしょ?いいじゃん!」
「いいのか?」
笑いかけると、周防くんは赤い顔を手でパタパタと扇いだ。
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