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出張であった研修を終えて駅まで一緒に歩く。
「で、飲むだろ?」
聞くと、周防くんは考えるような素振りをした。
「深谷先生には今日の研修話してあるんだろ?」
「そりゃ、駅まで送ってくれたし」
パートナーの名前を聞いただけでちょっと顔を赤くするのは周防くんらしい。
まぁ、こんな初心な反応をするくせに色々性的な経験はしているはずで、どうやっているのかは気になるところだが。
「今日、僕が居ることも?」
「まぁ……」
「じゃあ、聞いてみようか?」
頷く周防くんを見て僕はスマホを取り出した。
「は?」
周防くんのパートナーである深谷先生は周防くんの学校の養護教諭だ。
そして、この地域のダイナミクス専門の職員でもある。
四月からはうちの学校にも月一で来るようになったために僕たちは連絡先も交換した。
電話をする僕を見てソワソワする周防くん。
「あ、お疲れ様です。佐藤です。今、少し大丈夫ですか?」
『はい。大丈夫ですよ。お疲れ様です』
穏やかな声はDomっぽさは感じられない。
ただ、色んなセラピストにケアをしてもらってきた僕はこういう落ち着いた声が色気を帯びる瞬間を何度も見てきた。
まぁ、聞いている限り深谷先生のプレイは僕には物足りなさそうだし、そもそも同期のパートナーを試す気にもならないが。
電話で直接深谷先生と交渉した僕は電話を切って周防くんを見る。
「行こっか?」
笑うと周防くんは腕にあるブレスレットに触れていて、深谷先生からの贈り物だとすぐに気づいた僕はまたその幸せそうなその姿が眩しく見えた。
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