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引っ越し前のアパートにはよく来ていたが、新しい部屋に来たのは初めての周防くん。
キョロキョロと辺りを見る姿はちょっとおもしろい。
「……相変わらず必要最低限?」
キッチンとテーブルがあるだけなのを見て聞いてくる周防くんに頷いておく。
前のようなワンルームではなく部屋は増えたが、確かに物はあまり置いていない。
「あ、でも、今回は寝室は別だからそっちにオモチャは結構あるよ?見る?」
ニヤリと笑うと周防くんは真っ赤になって慌てて頭を横に振った。
「何照れてんのさ?深谷先生とも使うだろ?」
その反応がおもしろくてイジメたくなる。
「つ、使わねぇよっ!!」
「え?そうなの?」
笑いながらテーブルに買ってきた惣菜と缶ビールを並べると、周防くんは俺の向かいに腰を下ろした。
パートナーで恋人の深谷先生と一緒に暮らしているのを掘りたい気もする。
でも、あまりイジメるのは深谷先生に悪い気もした。
「深谷先生って“お仕置き”とかしないの?」
「おっ……っ!!」
軽くに留めたのにアワアワして缶を倒す周防くんを見てこれ以上はツッコむのをやめる。
「はいはい。わかった。聞かない」
両手を挙げて宣言すると、周防くんはわかりやすいくらいホッと息を吐き出した。
何かしらお仕置きの経験はあるんだろうが、聞きたいのをグッと堪らえる。
「いいなぁ。パートナー」
「探してるのか?」
「欲が強過ぎてセラピストでさえもう合う人が減ってきてるよ」
項垂れると肩を竦めた周防くんに缶ビールを渡されて僕は一気に煽った。
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