羨ましい

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 本当にすぐに深谷先生はやって来て、近くに居たというのが事実であったと知る。 「すみません」  玄関を開けると、深谷先生にも謝られてお互い恐縮し合った。 「上がってもよろしいですか?」  僕が体格の良い周防くんを持ち上げられるとは思わず素直に頷く。  でも、深谷先生だって周防くんより小さくて腕も細そうで運べるとは思わなかった。 「航生さん、帰りましょう?」  深谷先生が声を掛けると、少し眉を寄せてから目を開いた周防くん。 「ん?……あれぇ〜?とーや?」  ぽよんとまだ覚醒していない姿はいつものイメージとは違って、甘えるように深谷先生の首に腕を回しているのはちょっと見てはいけない気もする。 「そうですよ。迎えに来ましたから。帰りますよ?」  そんな周防くんにも優しく声を掛けながら深谷先生はその大きな体を抱き起こした。 「んー……眠い」 「なら、車まで頑張って下さい」 「やらぁ……」  抱き着いたままにへっと笑う姿は本当に安心しきっているように見える。  あのずっと抑制剤で抑えて頑なにセラピストのケアさえ拒否して、いつも緊張していた周防くんが。  深谷先生の頬にすり寄って強請るような姿はなかなか貴重な気がした。 「ハァ……仕方ないですねぇ」  ため息を吐いた、と思ったら深谷先生が周防くんを横抱きにして驚く。 「え!?大丈夫ですか!?」  思わず聞くと、 「はい。すみませんがドアだけ開けてもらってもいいですか?」  深谷先生はふわりと笑った。
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