ケア

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 億劫に思いつつも出ないわけにはいかなくて体を起こす。  昨夜から一日以上食べていないのは限界で、宅配を頼んだのは自分だ。  ドアモニターに映るのはやはり赤い帽子を被った見慣れた宅配員の制服。  二十四時間いつでも届けてくれるし、仕事で遅くなった日もかなり重宝している。  メニューも豊富で和食や中華まであって引っ越す前からのお気に入りだ。 「はーい、お待たせしてすいま……」  玄関を開けた俺もドアの向こうに居た宅配員もピタリと動きを止める。そして、 「「え!?何で??」」  お互い顔を確認して声がハモった。  ピザを持ってそこに居たのはいつも来てくれる大学生の庄田(しょうだ)くんではなく、お盆前もプレイしてもらったばかりのハルだ。 「翔馬!?」  いつもの真っ黒の服とは違う白地のシャツに赤い袖口だが、この声も緑の目と垂れた金色のピアスも間違いない。 「なん……」  言いかけた瞬間に目眩を感じて、一瞬にして僕は方向感覚を失った。   「おいっ!!」  片方にピザを持っているハルの手も届かず玄関先で座り込む。  頭がグラグラするし、息苦しい。 「ったく…………入るぞ!!」  声がしてパタンとドアが閉まった。 「翔馬、聞こえるか?」  聞こえるし両肩を掴まれたのはわかるが動けない。 「翔馬!“Look(こっち向け)”」  コマンドを使われて、やっと僕はゆっくりハルを見ることができた。 「何堕ちてんだよ。この前足りなかったか?」  聞かれても僕だってわからない。
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