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提案
嬉しいことが続いて、その幸せな気持ちでいっぱいな僕は仕事も何だかんだ順調に進む気がする。
もうすぐ夏休みも終わりで、授業準備を終えて帰宅するのは少し遅くなった。
車を停めてエレベーターで三階まで上がる。
降りて歩き出そうとした僕は一番端のうちの前に誰かが座り込んでいるのが見えて一瞬足を止めた。
真っ黒の上下で頭にもパーカーを被って座り込んでいるなんて……怪し過ぎる。
だが、エレベーターのドアが閉まる音に気づいたのか顔を上げたのは……
「ハル!!」
あの緑の目が見えて走ると、立ち上がったハルはハァと深い息を吐き出した。
「元気じゃねぇか」
「え?」
僕の両肩に手をついて言われて、どうしたらいいのかわからない。
「クリニックからメッセージ送っても電話しても反応がないって先生たち心配してたぞ」
顔を上げたハルにビシッとデコピンをされて額を押さえた。
とりあえず荷物もあるし、鍵を開けて玄関に荷物を置いてからスマホを確認する。
「あ、音切ったままで気づいてなかった」
笑うと、ハルに今度は軽めのチョップをされた。
「バーカ」
言いながらもその目は優しい気がする。
「……ハルも心配してくれたの?」
「また飯食ってなかったり、キツくて倒れてたりするかもしれねぇだろーが」
そっぽを向いたハルの耳がちょっとだけ赤くなっていてかわいいと思ってしまった。
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