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十七時半。
そんな時間にクリニックに居るなんて変な感じだ。
昨夜、食後にハルに促されてクリニックの予約をしたんだが、こんな時間に来るのは学生以来でちょっと落ち着かない。
しかも、ハルはまだ来ていないらしく、僕は待合のソファーでハァとため息を吐いた。
「顔色は悪くなさそうだけど……悩み事?」
声がして顔を上げると、微笑んでいる湊さんが手招きをする。
「カウンセリングルームで待っててって!」
言いながら案内された部屋は高校生の頃はよくプレイをしてもらっていたセラピスト、サホさんの部屋だ。
サホさんはいつもソファーに座って高校生の僕とコマンドを混ぜて話しながらハンドマッサージをしたり、頭を撫でてくれる程度のこのクリニックでは一番緩いプレイをするセラピストでもある。
「え?今日、サホさん?」
「ううん、すぐに御堂先生が来るから詳しくは先生から聞いてね?」
聞くと、湊さんは首を横に振ってドアを開けた。
部屋に足を踏み入れると、そこは明るいナチュラルウッドの床に白いカーペットと淡いグレーのソファー。
観葉植物がいくつか置いてあるのも今までと変わりはない。
ただ、そのソファーの前にはガラスのテーブルがあって、湊さんは部屋にあった冷蔵庫を開けるとアイスティーを出してくれた。
「お待たせしました」
用意してくれた湊さんにお礼を言っていると、入って来たのは御堂先生。
その後ろからはハルも入ってきて、この部屋にハルが居るのはかなり違和感があった。
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