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翌日は金曜日で、早めに仕事を終えた僕は手早く荷物を片付けて職場を後にした。
車に乗り込んで向かう先は駅でいうと四駅離れたクリニック。
駐車場に車を停めてハンドルに腕を付く。
ハァ……と深く息を吐くと、コンコンとためらいがちに運転席のガラスをノックされた。
そこに居たのは心配そうな女性。
「あ、湊さん、こんにちは」
ドアを開けて微笑むと、隣にある薬局にでも居たのかクリニックの受付の湊さんは僕の顔を覗き込んできた。
「大丈夫?顔色悪いけど?」
湊さんとはもう十年の付き合いで、僕のこともよく知られている。
「急に来ちゃったけどいいですかね?」
診察券を見せると、受け取って湊さんは頷いた。
「受付するから落ち着いたら中にいらっしゃいね?」
高校生の頃からだから、僕がここにどんな状態で来るのかももう理解されている。
笑って頷くと、湊さんはクリニックに入って行って僕はもう一度大きく息を吐いた。
今日はどうなるだろう?
そして、このケアでどれだけ保つだろう?
考えても仕方なくて重怠い体を動かして車から降りた。
クリニックに足を踏み入れると、
「翔馬くん、第二診察室にどうぞ」
湊さんに微笑まれてそのまま受付の前を通り過ぎる。
観葉植物が並んだクリーム色の廊下を歩いてもう何度目かの息を吐くと、いつもの真っ白なドアをノックした。
「こんばんは。お疲れのようだねぇ?」
出迎えてくれた御堂先生は三十代後半の先生で、初めてこのクリニックに来た時からずっと僕の担当医だ。
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