不調

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不調

 どうにもできない欲が僕の中で渦巻いて発散もできず暴れ回る。  抑制剤?  効くならこんな苦労はしていない。  パートナー?  居てくれるならそんな幸せなことはない。 「っ……ちくしょ……」  人生思い通りにならないことだらけで喚きたくなる。  でも、僕は何一つ変えられないまま今日もまた一日を笑顔で乗り切ろうと、両頬を叩いて家を出た。  二十七歳にもなってもまだ中学生にも間違えられるような童顔。  女の子にだって「かわいい」と言われるような女顔。  百七十センチもなくてスーツを着ても笑われてしまうような小柄な体。  だから、僕は普段はTシャツかパーカー。  下は短パンかジャージ。  それでも年に何度かスーツを着なければいけない日があって憂鬱だ。  小学校の教員になって六年目。  ある程度仕事には慣れて後輩も居る立場にはなった。だが、 「しょーまっ!やっほー!」 「はよー!」  ひらひらと手を振られてされる軽い挨拶。 「おはよう……てか、“先生”ねっ!!」  訂正しても「はいはい、センセー!」と児童たちは笑いながら走って行ってしまった。 「まったく……」  ため息を吐きながら職員玄関で靴を脱いで自分の靴箱に収める。  中履きを履いて肩に掛けていたリュックを下ろすと、 「あ!おはようございます!翔馬(しょうま)先生!」  僕の二つ上で一緒に四年生を受け持っている竜也(たつや)先生が出勤してきた。  僕と竜也先生はどっちも“佐藤(さとう)”で呼び分けるのはわかる。  でも、同じ名前呼びでも僕の方は何か違う気がするから複雑だ。
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