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「え? あれ? あの……」
どうしてこの人は生きているの?
「えっ、と――……」
僕は霊体に意識を乗っ取られたんじゃないの?
「大丈夫? どこか打った?」
しばらく硬直していると、男の人は僕の顔を覗き込んでくる。赤茶色の瞳がみすぼらしい灰色の髪の僕を写した。
だけどダメ。綺麗な瞳に汚い僕なんか写しちゃいけない。
「……っつ!!」
僕は唇を引き結び、顔を俯けた。
その行動が余計に心配させてしまったらしい。
「どこを打ったの? 大変だ、手当てをしなければ!!」
男の人は慌ててそう言うと、僕の身体がふんわりと宙に浮いた。
「えっ!?」
何事かと思ったら、男の人は軽々と僕を持ち上げ、横抱きにしたんだ。
いくら僕がご飯を食べていなかったとはいえ、男だし体重はそれなりにある。しかもこの人の体型は細身ですらりとしている。筋肉なんてついてなさそうなのに、簡単に僕を持ち上げるなんて、この人、見かけよりずっと力が強いんだ……。
――って、そうじゃない! 感心している場合じゃない。
「わわっ、大丈夫です!! どこも痛くなんてないです。怪我してませんから、だから下ろしてください!!」
僕は両足をバタバタさせて、男の人に下ろして欲しいと抗議する。だけど男の人は眉間に皺を寄せてジーッと見つめてくるわけで……。
だからまた、男の人の目に僕の汚い姿が写ってしまう。僕はまた顔を俯けた。
この人は会って間もない僕を心配してくれるとても優しい人。だから汚い僕が傍にいちゃいけない。
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