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「そんな……」
もう二度と同じ過ちを繰り返さないようにとあれほど言い聞かせていたのに――なんということをしてしまったのだろう。
慌てて袖をめくり、奏美さんを襲った時に出来たような痣がないかを確かめるものの、痣らしきものは見当たらない。
だったら違う方法で手にかけたっていうこと?
いったいどういう方法で?
「……っつ!!」
居ても立ってもいられなくなった僕は、ベッドから抜け出し、ドアを開けた。
目の前には階段が広がっている。その階段の下から、水の流れる音が聞こえてくる。
僕は急いで階段を駆け下りていく。あと4段というところで僕の右足は左足の邪魔をした。
身体が傾く。
落ちる!!
僕はやがてやってくる激痛に耐えるため、ぎゅっと目を閉じた。
……んだけど…………。
「あれ?」
痛くない?
たった数段だけど体勢は崩れた。階段を踏み外したんだから、僕の身体はお団子みたいになって一気に転げ落ち、硬い地面にぶち当たると思ったのに、少しも痛みを感じない。
それにそれに、階段から勢いよく落下したんだし大きな物音さえもしないなんて……。
と、いうか……。
「あれ?」
身体があたたかい。誰かの腕に包まれてるみたい。
不思議に思って恐る恐る閉じた目を開けると――。
目の前には赤みがかった茶色の髪をした、とても綺麗な人がいた。
「大丈夫? 怪我はない?」
「あな、たは……」
鼻にかかった、甘い声。この声の人は誰だか知っている。トラックに轢かれそうになった僕を助けてくれた男の人だ。
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