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「ねぇ、聞いた? なんでも清人さんが亡くなられる直前、あの子が傍にいたそうじゃない?」
「イヤねぇ、きっと、どこの子かさえもわからないあの子の面倒を見たばっかりに、清人さんはお亡くなりになったのよ?」
「ご家族の方は皆さん反対していたようじゃない? それを、清人さんは律儀というか、捨てられていたあの子を育てていたんでしょう? 清人さんもお人好しよね」
「でも、酷いわよねぇあの子。恩を仇で返すなんて」
「ちょっと、もうそれぐらいにしておいた方がいいわ。でないと、あの子に呪い殺されてしまうわよ?」
「…………」
――呪い殺す。
普通ならできるはずのないことだけど、もしかすると僕にならできることかもしれない。たたかれた陰口には返す言葉も見つからない。
この陰口と突き刺すような視線は今にはじまったことじゃない。これは僕が五歳になった頃から絶えずあった。
それは僕の容姿も関係していた。
黒とは決して言い難い灰色に近い髪の色と、日に当たらないために真っ白い日焼け知らずの肌を持つ、人間離れした姿。
そして、常人にはない体質が関係しているからだ。だから今さらどうこうしようとも思わないし、陰口は当然だと自分でもそう思う。
……だけど、父さんが亡くなったこんな時にさえも、向けてくる冷たい視線は正直苦しい。
でもそう思うのはけっして許されないこと……。
他人の反応は当然だ。
だから仕方ない。
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