わたしの自慢の幼馴染

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 ソファに腰掛けて、調べていた文献に目を通していると、蓮水くんは隣で将棋の雑誌を読んでいた。帰省すると、私のおじいちゃんと2人で将棋をするのは恒例行事のようになっているから、本当に好きなことなのだ。  昔から、お互いにやりたいことをしながらなんとなく隣にいる。会話があってもなくても、居心地がいい。  蓮水くんは、ふと思い出したことがあるようで、立ち上がって鞄からガチャガチャのカプセルを出してきた。 「わか、これやるばい」  蓮見くんは、私にガチャガチャのカプセルを渡してきた。開けると、広瀬武夫のイラストが描かれたラバーストラップが入っていた。 「わぁ、広瀬武夫だ…!ありがとう」  蓮水くんはそのまま何も答えず、ただ穏やかに微笑み、また雑誌を読み始めた。  会話が途切れたので、私は集中して文献に目を通す。付箋を貼っていたけれど、そのうちウトウトしてきてしまい眠りに落ちていた。  ふと体に何かが乗るような感覚がして、目を覚ました。蓮水くんが、私に毛布をかけてくれようとしていたらしい。 「あ、ごめん。寝てた」  時計を確認すると、24時を超えてしまいそうな時間で、隣の部屋に戻るため慌てて本をトートバックにしまう。 「疲れとるなら、泊まってけば?」 「ううん、大丈夫」  立ち上がって玄関に向かい靴を履いた。     「じゃぁ、またね」  私がそう言うと、蓮水くんは「またな」と言ってドアを開けてくれる。  こうやって、蓮水くんとずっと穏やかな日々が続いていくと思ってた。  でも、それが私の一方的な気持ちだと知ったのは、すぐ後のことだった。  
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