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●ずっと大切にしたい子
好きな子がいる。
名前は夏目若葉、物心付く前からずっと一緒にいる大切な幼馴染。
俺は若葉のことを愛していて、ずっと一緒にいたい。そんな気持ちは彼女には届かず、今でも"ただの幼馴染"という関係を続けている。
生まれ育ったのは、隣に観光地がある田舎町。山のなかにぽつん、ぽつんと1キロくらい間隔を空けて家が建っているようなところだった。
"わか"とは生まれたときから家が隣同士だった。5つ上の兄も同い年で仲が良く、よく家にいっては二人でお互いの好きなことをするような関係だったらしい。
わかは、保育園では一番小さくて、誕生日も最後で4月生まれの俺とはほぼ1年違う。だから同い年というよりも、ちょっと下の子という印象だった。
物心ついた頃の俺は、わかのことを相当変な子だと思っていた。
いつも歴史の教科書や偉人の伝記に読みふけり、たまに声をかけられると、到底理解できない話ばかりしてきた。
「はすみくんは、いとうひろぶみとおおくぼとしみちどっちがすき?」
「………だれ?」
「めーじいしんのときに活躍した人たちばい」
「……知らない」
「そっか。わかばは、伊藤博文」
「ふーん……?」
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