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わかがこういう会話ばかりするのを、流して聞くことが多かった。
変なやつ。
保育園でも、みんなと遊ぶ事もあったけど、一人でよくわからない歴史の本を読んでる姿のほうが多く、自分の世界というものがしっかりある女の子だった。
そういう彼女だったから、俺はあのとき救われたんだと思う。
小さい頃の俺は、とにかく母さんが大好きだった。
親父が経営してる老舗旅館で、女将をしていて、綺麗で優しい人だった。兄の梗介にも、俺にも優しくて、しっかりした母さんのことを尊敬していたし、大好きだった。自分たちなりに大切にしていたと思う。
家に帰ってきて、保育園であったことを報告して、一緒に手作りの温かいご飯を食べる。布団で一緒に寝る時抱きしめてくれると、独り占めできている気がして嬉しかった。
そんな母から受ける愛情を返すように、肩叩きをしたり、旅館のお風呂で背中を流したりした。母が優しい笑顔で「ありがとう」と言ってくれるのが嬉しくて喜んでやったものだ。
でも、だんだんと話を聞いてくれなくなり、邪魔者のように扱われるようになった。
両親の喧嘩が増えて、見かねた夏目家のご両親が、梗介と俺を家に呼んでくれることが多くなった。
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