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本当に優しくて、笑顔が絶えない温かい家族。いつも自分が失ったものをしまったものを見せつけられる気がして辛かった。
だから、その中でぬくぬくと育っているわかのことなんか大嫌いだった。
「なぁ、蓮水、将棋せんね?」
縁側でぼーっとしてる時に、わかのじいちゃんに声をかけられたことがある。
「うん………やります」
ただ、この場で気に入られるために答えただけだった。でもじいちゃんは、目を輝かせて居間にある将棋盤を縁側に持ってきた。駒の動かし方、勝ち方を簡単に教えてくれて、二人で将棋を指す。
「蓮水は、頭が良うて凄か子ばい」
一度やっただけなのに、とても褒めてくれて、優しく頭を撫でてくれた。シワシワで厚みのある手が暖かくて、涙が沢山溢れてきた。
じいちゃんは困った顔をして、慌てて家族に内緒で家にある団子をくれた。でも、それはお供え用だったらしく、バレて叱られていたけれど、じいちゃんは俺に"また食べような"と、こっそり笑顔で言ってくれた。
それから、わかのじいちゃんのことが、大好きになって、将棋も好きになった。
大好きなじいちゃんが、大嫌いなわかのじいちゃんであることが許せなくて、じいちゃんに打ち明けたことがある。
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