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本当は嫌いじゃない。
一番親しいわかに、むしゃくしゃしてる気持ちを、一方的にぶつけていただけ。いろんな気持ちが溢れてきたけど、言葉にできなくて、ただ謝ることしかできなかった。
「……ごめん………」
そう呟くと、わかは不思議そうな顔をしていた。
「え、なしてあやまっと?」
「……ごめん」
「またナイショでおだんご食べたと?わかばにあやまるんじゃなくて、おかあさんにあやまったほうがよかよ?」
俺とわかのやりとりに、じいちゃんはゲラゲラ笑っていた。
そして、俺が7歳のときに、母親は不倫相手と駆け落ちをした。しかも、相手は旅館で働いていた幹部社員だった。子どもに冷たくなった原因は、男ができたからだったらしい。それでも、出ていくときに、俺は泣いて嫌がった。
「やだ、出ていかんで………!ちゃんとよか子にするけん、言いつけも全部守るし、もう嫌ってゆわんけん……!」
「ごめんね、もう私の人生に梗介も蓮水も必要ないの」
「……俺はよかばってん、蓮水になんてこと言うたい!!はよう行けや!」
梗介に抱きとめられて、母親が去っていくのをただ泣きながら見るしかなかった。
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