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それから、男三人での生活が始まった。父さんは、今まで以上に優しくしてくれたし、穏やかに見守ってくれた。梗介も、うざいくらい優しくしてくれた。
それでも、ぽっかり空いた心の穴は拭えない。
周りの同情してることがありありとわかる。薄っぺらい作り笑いすれば騙されるから、それで交わしてきた。
小学校でも、親に聞いたらしい女子たちによく話しかけられた。
__蓮水くん、お母さんいなくなっちゃったの?
__お母さんいなくてたいへんだね
__頑張ったんだね、えらいね
同情からくる言葉、子どもだからこそ、残酷に言えてしまう言葉を浴びせられて、辟易とした。笑顔で壁を作って、薄っぺらい同情の言葉を交わしていった。
父さんは仕事が忙しくて、梗介と俺は、夏目家で過ごすことが変わらずに続いた。
そんなある日、わかが俺に怒ってきた。それは二人で小学校から帰り、夏目家の縁側で過ごしていたときだ。縁側でぼーっとしていると、わかが話しかけてきた。
「はすみくん、きいて!」
「………なに?」
「あんね、あくたがわりゅーのすけは、夏目漱石んストーカーで、太宰治はあくたがわりゅーのすけのストーカーやったんだって!」
意味が全くわからないけど、反射的に作った微笑みを浮かべた。
「あはは、面白かね」
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