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「殺しで手を汚したのはこの俺だぞ。せめて百万は置いてってくれ」
「他ならぬ咲田の旦那の頼みだ。いいよ、百万だけ残しといてやる」
紙袋から札束ひとつを取り出して、私の足下に放り投げた。
「あばよ、大間抜けな元刑事さん」
組の金と私の拳銃を手中に収めた飛田は、高笑いしながら去っていった。
足下の百万円を拾い上げた。これが私の当面の生活資金となる。
携帯電話を手に取って、馴染みの番号を押した。
「咲田です。神原さん、ちょっとお知らせしたいことがありまして。実は今2525にいるんですが、喜多と西と六角が撃たれて仏になってましてね。しかも金庫が空なんです。妙なことに飛田だけいないんですわ。仲間を殺して組の金を奪って、どこかに飛んだんじゃないんですかね」
飛田以外の全員が殺された。
組の金がすべて消えた。
飛田が何も言わずに消えた。
凶器は飛田の手にある。
飛田が犯人であることを示す状況証拠はこれでもかというほど出揃っている。神原組長は警察には被害を届け出ない。飛田は組織に追われ、確実に殺される。
「バイトしないか。生死を問わず飛田を見つけ出したら、三千万円くれてやる。必要なら拳銃も用意する」
「もちろんお受けしますよ」
すべては計画通りだ。激しい血の雨が上がった後は泥濘だらけだが、それさえ私は何事もなく踏破してみせる。
了
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