君に届けたい朝ごはん

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僕の方が少し早く起きるから、彼女の寝顔をちょっと見る。付き合って、まだ3ヶ月。なんの化粧もしていない顔の方が好き。そんなことを言ったら怒らせるだろうから言ったことがない。少しプクッとした唇と長い睫毛がかわいい。 もっと好きなところは、起きてきて、顔を洗った後、僕の作った朝食を眠そうな顔で食べるとこ。パンや卵を頬張るごとに、目がどんどん開いてきて、気がつくと、満面の笑みでご馳走様って言う。 ご飯を食べるのが好きな彼女が僕は好きだ。 冷蔵庫を開けて、材料を取り出す。 金曜日の夕方に友だちの農園で買った新鮮なレタスは、1枚食べると、シャキシャキを通り越して、パキパキとするくらいの食感。みずみずしくて香りが豊か。 真っ赤なトマトは、果汁がぎっしりで何もつけなくてもいいくらい。 どんな顔をして食べてくれるだろう。 僕が、朝ごはんをきちんと作るのは土曜日の朝だけ。 朝食を作るために金曜日は残業しないことに決めている。 仕事を効率よく終わらせて定時に上がる瞬間、僕はなんてできる男なんだと、自分で自分を褒める。 月曜日にミスに気づくなんてことも今のところはない。
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