君に届けたい朝ごはん

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    ーーー3ヶ月前ーーー お昼休み。 朝コンビニで買ってきたサンドイッチを食べるのが僕の習慣。 そんな僕の隣の席の津々木さんは毎日お弁当を持ってきている。 「すごいね、津々木さん。お料理、上手なんだね。」 隣の席の彼女のお弁当を見ながら僕が言うと 「青木さんの分も作りましょうか?」 って、ニコニコ笑いながら返事してくれた。 彼女の笑った顔はたびたび見ていて、実は笑顔がかわいいなってちょっと思っていた。 「あ、いや。お料理が上手ってカッコいいよね。 僕も作るけど、卵焼きなんかフライパンにくっついてさ、ウインナーなんか片面ばっかり焦げて、でさ…。」 彼女のお弁当にはきれいな卵焼きと、すじのはいったウィンナーが並んでいる。 「ふふ。…誰かに食べてもらうと上達しますよ。」 「誰かに食べてもらってるの?津々木さん。」 そっか。一人暮らしでも彼氏はいるってことかな。 「今は、食べてもらってませんが、実家では母に。」 「あ、ああ、…そっか。」 彼女が自分の卵焼きを箸でつまんで食べる。 その姿をじっと見つめてしまう。 「焦っちゃダメなんですよね。卵焼きは、油をフライパンに敷いてからじっくり油の温度を上げて、 一旦、フライパンを濡れた布巾で冷やしてから 卵を流し込むんです。 何回かに分けて…クルクルと巻くんですよ。」 目があって、ドキッとした。 「あーははは。無理かなー。ゆっくりなんか作れない。フライパンの温度なんか気にしたことないよ。」 「青木さん…意外とせっかちなんですね。」 彼女がお弁当を食べる横で僕は、コンビニのサンドイッチのパッケージを開けた。 「僕、やっぱり料理は苦手だな。上達するきっかけ…ないもんな。」
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