寄り道

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 「った」  「え、どうした?」  「く、首、捻った。い、痛いー」  右横の筋を抑えながら情けなくもわめく。  「ああ、それ痛いんだよなあ。どうする、冷やすとかする?」  「冷やす?」  「うん、A11ならあるでしょ」  A11。  嬉しくなって大きく頷こうとしたらまた激痛に襲われた。  「ああっ、うう」  「ごめん、ヘンなこと言った。そうだ、俺あっちのドラッグストアで湿布買って来るよ。待ってて」  え。不自由な首で見上げた時には、カーキの背中はもうだいぶ先を走っていた。  「湿布って……」  私、首に湿布張り付けて銀座を歩くのかな。しかも瀬名さんと一緒に。ああそれじゃまさしく、ソボじゃないか。いや、ソボだってしないだろうに。  頼むよ、和光、なんとか助けて。目の前のショーウインドウをすがるように見つめていると、息せき切った「お待たせ」が聞こえてきた。  「はい、これ」  見ると、バンテリン塗り薬と湿布が二種類入っていた。大きいのと小さいのと。  「あ、有難うございます。ええとお代、」  「そんなのいいって。ともかく早く塗らないと」  言うなりバンテリンのキャップが外される。  「え、ここで?」  「うん。あ、俺塗ろうか?」  大丈夫、ソボじゃないんで。  「それは塗れるのでいいんですけど、ええと、あの……」  「ん? ああ、ごめん」  そう言うと瀬名さんはくるりと背中を向けた。目の前で塗るのも恥ずかしかったけど、これはこれで恥ずかしい。慌ててバンテリンをパササと塗布した。
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