12人が本棚に入れています
本棚に追加
「った」
「え、どうした?」
「く、首、捻った。い、痛いー」
右横の筋を抑えながら情けなくもわめく。
「ああ、それ痛いんだよなあ。どうする、冷やすとかする?」
「冷やす?」
「うん、A11ならあるでしょ」
A11。
嬉しくなって大きく頷こうとしたらまた激痛に襲われた。
「ああっ、うう」
「ごめん、ヘンなこと言った。そうだ、俺あっちのドラッグストアで湿布買って来るよ。待ってて」
え。不自由な首で見上げた時には、カーキの背中はもうだいぶ先を走っていた。
「湿布って……」
私、首に湿布張り付けて銀座を歩くのかな。しかも瀬名さんと一緒に。ああそれじゃまさしく、ソボじゃないか。いや、ソボだってしないだろうに。
頼むよ、和光、なんとか助けて。目の前のショーウインドウをすがるように見つめていると、息せき切った「お待たせ」が聞こえてきた。
「はい、これ」
見ると、バンテリン塗り薬と湿布が二種類入っていた。大きいのと小さいのと。
「あ、有難うございます。ええとお代、」
「そんなのいいって。ともかく早く塗らないと」
言うなりバンテリンのキャップが外される。
「え、ここで?」
「うん。あ、俺塗ろうか?」
大丈夫、ソボじゃないんで。
「それは塗れるのでいいんですけど、ええと、あの……」
「ん? ああ、ごめん」
そう言うと瀬名さんはくるりと背中を向けた。目の前で塗るのも恥ずかしかったけど、これはこれで恥ずかしい。慌ててバンテリンをパササと塗布した。
最初のコメントを投稿しよう!