寄り道

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 「もう大丈夫です」  「ほんと?」  心配そうに振り向いた瀬名さんの目には、首筋を光らせたバンテリン臭い女が映っているはずだ。情けないにも程がある。  「お世話になってすみません」  頭を下げたいのに痛くて下げられない。何だろう、この状況は。  「そんなのは全然構わないけど、明日の仕事キツイね」  「まあでも単に捻っただけですから。即レスだけ気をつければ」  「即レス?」  「はい。『山口さーん』とか呼ばれてすぐ振り向かない、とかですかね」  「ああ、何か凄くナースっぽいな」  「どの辺が」  「『さーん』のイントネーション。それ、うちの病棟でも行きかってるから」  何となく楽しそうな瀬名さんだ。  「……瀬名さん、今の仕事好きですか」  「うん? J大ってこと、それとも循環器ってこと?」  「どっちもです」  立花さんと一緒の職場で。  「好きだよ。働きやすいし色々な症例も見られるし」  そうか、好きなんだ。そりゃそうだよね。
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