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そんなことがあっての「起爆剤発言」だ。
「ええと、それはまた……どうして?」
「どうしてかと言えば、助けたいから」
「助けたい?」
うん、と頷いて瀬名さんはあんずパイを大きく口に入れた。今日の「うん」はあの時と違って随分力強い。それはたぶん良いことなんだろうと思いながら、私も自分のシャリシャリのあんずシャーベットを細長いスプーンですくって食べる。
「美味しい?」
「はい、とっても。夕暮れの風が吹き抜けました」
「もしかして『初恋』?」
「うわ、懐かしい。それ、母親が大好きで」
「うちは祖母」
ソボ……いけない、いけない。
「……ええと、もうちょっとさっきの訊いてもいいでしょうか」
「さっきの?」
「はい」
一つ息を深く吸う。
「助ける、って」
ああ、それか、と瀬名さんは頬杖をついた。
「うん。前にもちょっと話したけど、立花さんにはどう見ても両想いの相手がいるんだけど、でもなんだか突然その人、ストッパーかかっちゃったみたいなんだよ。最近」
「ええと、日高さんでしたっけ、確か薬剤部長さんですよね、誰も勝てないオールマイティーな」
その有名な日高さんは、立花さんとは高校の同級生で、病院ではミスターJと呼ばれているというのを前に聞いたことがある。瀬名さんが勝てないって、どれだけ素敵な人なんだろうと俄然興味が沸いたのだった。
「え、でもまた何で?」
「さあ、それは俺にもわからない。わからないけど、多分俺に出来ることはあるだろうなって」
瀬名さんの瞳が一瞬細くなる。
「出来ること?」
「うん。嫉妬させて煽る」
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