12人が本棚に入れています
本棚に追加
「はい?」
「ルール違反だけど、ちょっと和光見ていかない?」
「ルールって、そんなの何かありましたっけ?」
さすがの人波に、少し横の路地に入りながら見上げると、瀬名さんの瞳が夕方の日差しを受けてキラキラ光った。ちょっと息を呑む。
「相変わらず綺麗ですねえ、瀬名さんの目って」
思わず口にすると、また言ってる、見飽きない?と笑われる。
「飽きませんねえ。だってやっぱりそんなに光る人って滅多にいませんもん。稀にハリウッドの俳優さんとか」
プッと吹き出す音が聞こえて、それから本格的な笑い声になった。
「ハ、ハリウッドの俳優さんって」
しまった。またきっと“祖母的な”発言だったに違いない。瀬名さんが男の子みたいに笑う時は、大抵お祖母さんが関係しているから。
「それって、もしかしてお祖母様が」
案の定、うんそう、と笑いながら頷いていらっしゃる。
「……ですよね」
咲、私、茶飲み友だちどころじゃなかったよ。じゃなくてソボ、ご先祖様的なポジションだった。そんなことを思っていたら、
「行こうか」
明るい声が降ってきた。見上げると、銀座通りの方を見ている瀬名さんの顎の線が急にくっきり見えて、ちょっと心臓が跳ねた。
最初のコメントを投稿しよう!