寄り道

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 「起爆剤……?」  「甘酸っぱい」という言葉そのもののあんずの半身を口に入れようとして、(予想外過ぎる言葉のせいで、“初夏限定のアプリコットパフェ”の中に)落とした。  「おっと」  「いや、おっとじゃなくて」  飛んできたシロップを慌ただしく拭き取りながら、とりあえずの驚きを伝える。  「大丈夫?」  「うん、平気です。って、そうじゃなくて」  「うん?」  いぶかしげに首を傾けた、こちらは「夏空」そのもののお方にため息をつく。  「なんでまた」  「“ケアの人”だから?」  「いや、だからって」  「そう?」  面白そうに言うと、目の前の人は自分のアプリコットパイを力強く切り取った。  「味見する? ザ・あんずって感じだよ。山口さんもきっと気に入ると思う。どうぞ」  見ると、綺麗に並んだつやつやのあんずたちがニッコリしている。初夏限定のアプリコットパフェと並んでいたく悩んだパイが目の前に。  「え、いいんですか」  「あれだけあんずあんずって連呼していたら、もう堪能していただくしか」  あんずに負けないくらいの笑顔で、お皿がずいっと差し出された。  「すみません。では遠慮なく」  金色と橙色の長方形は、つるりとサクッとして、甘いのだけれどこめかみに汗がにじむほど酸っぱくもあった。  「う、すっぱ」  思わず顔をしかめるとクックッと笑ってらっしゃる。あんずはβ―カロテンの王様だから、抗酸化やアンチエイジング効果は抜群と、いつものようにミニ知識も入れてくださる。  「美肌っ?」  思わず前のめりになると、笑い声が大きくなった。  良かった。
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