5人が本棚に入れています
本棚に追加
/16ページ
大西洋を南進中、敵の航空機に発見された。
どうやら、伊92の行動は筒抜けであったようだ。
待ち伏せされていたのだ。
「急速潜航!」
敵の対潜哨戒機が迫ってくる。
ここで沈められては何のための遣独作戦であろう。
絶対に生き残らなくては。
敵機はソナーを投下。
海中の音を聴き取って、伊92の居場所を探ろうとしてくる。
潜水艦の安全深度は100mであるが、120mまで潜行し、沈黙を保った。
敵のソナーに聴取されないよう、エンジンやモーターはすべて停止。
とたんに、艦内の室温が上昇していく。
敵機が投下した爆雷が艦のすぐ近くで爆発し、大きく揺らぐ。
穴が開けば、生存は絶望的である。
何度も聞こえる爆発音に戦々恐々としながら、敵機が去るのを待つ。
室温計は40℃を差している。
湿度は90%。
吹き出す汗が床を濡らしていく。
二酸化炭素濃度は4%を超えた。
数人が気絶し、軍医の元に運ばれていく。
やがて、爆発音は聞こえなくなった。
敵機が去ったものと判断した艦長は、浮上命令を出す。
最初のコメントを投稿しよう!