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さっそく、潜水艦の引き上げ作業が行われた。
艦内には、ドイツから提供されたさまざまな軍事機密が積み込まれている。
ドイツ製の機関銃、対空レーダー、いずれも爆発で粉々になっており、まったく使い物にならなかった。
耐水金庫も爆発で破壊されており、ジェットエンジンの設計図も失われてしまった。
こうして、日本とドイツとを往復するという壮大な作戦は失敗に終わった。
* * *
近藤艦長は軍法会議にかけられたが、ドイツまでの往路を成功させた功績が認められ、責任は問われなかった。
代わりに、近藤艦長には陸上勤務への配置転換が打診されたが、近藤は断った。
近藤は自決しようとしていたのである。
貴重なドイツ製兵器や最先端のレーダー技術、ジェットエンジンの設計図などなどを、結局は日本に届けることができなかったのである。
14名の命も奪ってしまい、潜水艦も喪失してしまった。
死んで国家に詫びるしかない。
そう考えた近藤であったが、自分はヒトラー総統から直々に勲章を授与された身分である。
また、ドイツまでの往路を成功させた、帝国海軍の英雄でもあった。
自決は許されない。
となると、軍人らしく、戦って散るしかない。
近藤は、引き続き、潜水艦の艦長職を希望した。
軍令部は近藤の意向を受け入れ、伊74の艦長に任命した。
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