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伊92は昭南島に到着した。
ここはイギリス軍の要塞があった場所だが、日本陸軍がイギリス軍を降伏させ、今は日本が支配している。
軍港にはたくさんの機雷が敷設されている。
停泊している艦船は動けないので、潜水艦から魚雷攻撃を受けると大被害を受けてしまう。
そこで、敵の潜水艦が近づいてこないよう、機雷とよばれる爆弾を海中に大量に敷設するのだ。
機雷を敷設している場所もまた、軍事機密である。
どの航路で行けば機雷に触れることなく入港できるのか、入港する味方の艦船に、事前に暗号で連絡することになっている。
伊92は暗号で送られてきた機雷の情報を頼りに航行し、無事に昭南島の軍港に入港した。
広島県呉港からここまで、十日間かかった。
燃料、真水、野菜や果物など新鮮な食べ物も補給する。
艦の整備も重要だ。
ドイツはまだまだ、遥か彼方である。
乗組員たちは、久しぶりに長時間の睡眠を取ったり、運動を楽しんだりと、大いに楽しんだ。
と、同時に「お届け物」の準備も着々と進められた。
潜水艦の艦底には、錫の延べ棒が大量に搬入された。
錫はメッキに使う重要な軍需物資である。
アジアで多く採掘されるが、インド洋を封鎖されているドイツにとってはなかなか手に入らない貴重な物資。
天然ゴムも、大量に積み込まれた。
車のタイヤに使われるのはもちろん、様々な機械のパッキンとしても使われる。
これもまた、ドイツが渇望している物資である。
十二日間の停泊を終えた伊92は、ドイツに向けて出港した。
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