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伊92はインド洋を順調に西へと進んでいく。
イギリス支配下の海域なので、補給のために寄港することはできない。
人間が生きていく上で、「水」は必要不可欠なもの。
潜水艦で真水は貴重品だ。
艦内に風呂は存在しないが、下士官や将校が使うためのシャワー室は一つある。
真水の備蓄状況にもよるが、シャワーは週一回使えればよい方だ。
乗組員たちには週に一度、洗面器一杯分の真水が与えられる。
この水で、体を拭いたり、洗濯したりするのだ。
もともとは白であったはずの乗組員の下着は全員、醤油で煮たような色に変わっていく。
洗濯をしても干すところがほとんどない上に、湿度は85%以上あり、なかなか乾かない。
潜水艦生活で困ることの一つは「匂い」。
機械からの油の匂いもきついが、それ以上にきついのが「体臭」である。
狭い艦内で100人以上が生活している。
高温高湿で風呂にも入れない、洗濯もたまにしかできない。便所も換気できない。
そのため、凄まじい異臭が常に艦内に漂っている。
潜水艦乗りは、こういった苛酷な条件で勤務するため、食事だけは少し優遇されている。
海軍の飯は基本的に米と麦を混ぜて炊くものであるが、潜水艦では米だけで炊いている。つまり、白い米を食べることができるのだ。
炊くと言っても、かまどがあるわけではない。
酸素が貴重な潜水艦では火を使えないため、なんと電気で飯を炊いている。
潜水艦乗りになって初めて電気で飯を炊けることを知る者も多かった。
米は保存が効くが、野菜や果物はそうはいかない。
潜水艦内の冷蔵庫は一週間で空になる。
その後は主に缶詰を食べることとなる。
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