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「弥助さん、俺はちょっと出かけたい」 思い切って言ってみた。逃げる三段をつけなければならない。弥助は睨むようにジロリと譲右を見たあと仕事の手を休めずにつぶやくように言った。 「お嬢様は、みつの様に手伝わせてお前さんの意識がなかった間、寝ずに介抱をしたんじゃ。そのお気持ちを無にするようなことはせんほうがええ」 譲右は黙ってうなずいた。弥助にそれが見えたのかはわからなかったが、再び「傘を持って行け」 というつぶやきのような声が耳元に届き、譲右は戸口に立てかけてある傘を手にした。
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